打ち上げ前にPlan(計画)を作るのはなぜ?

TransXで惑星間航行をおこなうとき、あらかじめPlan(プラン=計画)を作る必要があります。
名称と細かい機能に違いはありますが、IMFDでも同じような手順になります。
今回は「マニューバの前にプランを作る」ことの意味について、かみくだいて解説します。

東海道を東へ

たとえ話として、自宅のある名古屋から東京まで出張する場合を考えてみます。
このとき、「東京は名古屋の東にあるから、東にひたすら歩こう」という人はあまりいないでしょう。

名古屋から東京までの移動手段としては、新幹線や飛行機などの交通機関が利用できます。
到着予定時間や予算などを考慮して、「○時○分発の新幹線」を選択することにします。

次に、自宅から新幹線の駅までの経路を決定します。
地下鉄などの交通機関から、条件に合うものを選択します。
「地下鉄なら時間はかかるけど安い」「タクシーは高いけど早い」などの選択肢が考えられます。

乗る順番としては「地下鉄・タクシー」→「新幹線」ということになります。
ですが考え方としては「新幹線」→「地下鉄・タクシー」の順番になるわけです。

宇宙の超特急

宇宙旅行の場合も同じことです。
地球から火星まで飛ぶ場合、まず地球―火星間の遷移軌道を考えます。
「安上がりだけどちょっと遅い=燃料消費が少ない」経路がホーマン軌道です。
燃料に余裕があれば「高いけど早い」準ホーマン軌道を選ぶこともできます。
打ち上げ・着陸は燃料消費が大きいため、ホーマン軌道を使うのが無難な選択肢です。

TransXでは、まずView:Eject Planでホーマン軌道を作成します。
惑星の位置によって、地球出発・火星到着の日時が決定されます。
これが、上のたとえ話における新幹線のダイヤに相当します。

この出発時刻に間に合うように、そしてホーマン軌道に到達できるように打ち上げます。
TransXEscape Planでは、どの方位への打ち上げでホーマン軌道に行けるか確認できます。
真東に打ち上げるのが「燃料消費が少ない安上がりな打ち上げ」ということになります。
燃料を無駄遣いしていいなら、真東以外の方向に今すぐ打ち上げることもできます。

参照:惑星間遷移軌道への打ち上げ

実際のフライトでは「打ち上げ」→「ホーマン軌道」の順番になります。
ですがTransXの手順としては「ホーマン軌道」→「打ち上げ」の順番になるわけです。

Plan(プラン)とManoeuvre(マニューバ)の違い

Plan(プラン)は「計画」であって、実際の経路とまったく同じである必要はありません。
駅に早く着いてしまったとき、予定より一本早い新幹線に乗るのと同じことです。

対してManoeuvre(マニューバ)は「実際にエンジンを噴かして飛行すること」です。
打ち上げが終了したとき、Planでの予定出発時刻より早くなったり遅くなったりします。
そのため、「Planを参考にしてManoeuvreを作成・実行」という作業が必要になります。

火星に行けるManoeuvreができたら、Planは用済みなので消去します。

地球―月の往復ミッション

地球から月へと飛ぶ場合、TransXPlanを作る必要はありません。

Off-plane transferを使う場合、とにかく遠地点で月とランデブーできればいいことになります。
ISSの軌道からでも、極軌道であっても、軌道上でタイミングを待てば月に行けます。
つまり、地球から月へと行く軌道は無限にあるので、計画の立てようがないわけです。

月から地球へ帰ってくる場合には、話が変わってきます。
月面に着陸している宇宙船は、月と一緒に地球の上空を周回しています。
軌道上の物体が高度を落とす(地球に帰る)ためには、今いる軌道と逆向きにエンジンを噴かして減速しなければなりません。
「月軌道の逆周り」になる方向はひとつしかないので、あらかじめ計画を立ててその方向を目指して飛んでいきます。

したがって、地球―月のフライトでは「往路ではManoeuvreだけ、復路ではPlanも使う」
ということになります。